事業所得とは?


事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。

ただし、 不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得山林所得になります。

所得の計算方法

事業所得の金額は、次のように計算します。

総収入金額-必要経費=事業所得の金額

総収入金額

総収入金額とは、事業から生ずる売上金額などの収入額のこと

総収入金額には、それぞれの事業から生ずる売上金額のほかに、次のようなものも含まれます。

(1)金銭以外の物や権利その他の経済的利益の価額

(2)商品を自家用に消費した場合や贈与した場合のその商品の価額

(3)商品などの棚卸資産について損失を受けたことにより支払を受ける保険金や損害賠償金等

(4)空箱や作業くずなどの売却代金

(5)仕入割引やリベート収入

収入金額とその計算

事業所得の収入金額は、金銭による収入だけでなく物または権利等を取得する時における価額や経済的利益を享受する時における価額も含まれます。

その年において収入すべき金額は、年末までに現実に金銭等を受領していなくとも、「収入すべき権利の確定した金額」になります。

したがって、実際に金銭等を受領したか否か、また、代金を請求したか否かは関係がありません。

例えば、その年の12月20日に商品を売って、その代金は年を越して翌年1月10日に受け取ったような場合には、商品を売ったその年の収入になるということです。

収入すべき時期をいつとするかは、それぞれの取引の内容、性質、契約の取決め、慣習などによって判定します。

また、商品を自家用に消費した場合や贈与した場合には、その商品の販売があったものとして取り扱われます。

その収入金額は、原則としてその商品の通常の販売価額です。

さらに、商品について災害や盗難などで損害を受けた際に受け取る保険金や、損害賠償金、公共事業などの施工による休業などの補償として受け取る補償金なども収入金額に含める必要があります。

このほかに、空箱とか作業くずの売却代金などの雑収入や、仕入割引なども収入金額に含まれます。

なお、青色申告者で一定の条件に当てはまる小規模事業者の場合は、収入や費用の計上時期を現金の出し入れを基準とする、いわゆる「現金主義」によることも届出により選択することができます。

必要経費

必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用のこと

例えば、次に掲げるようなものがあります。

(1)売上原価

(2)給与、賃金

(3)地代、家賃

(4)減価償却費

なお、家事上の経費は必要経費になりませんが、家事上の経費に関連する経費のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分に相当する経費の金額は必要経費となります。

必要経費の算入時期

事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額(債務の確定によらない減価償却費などの費用もあります。)です。

つまり、その年に支払った場合でも、その年に債務の確定していないものはその年の必要経費になりませんし、 逆に支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります。

この場合の「その年において債務が確定している」とは、次の三つの要件をすべて満たす場合をいいます。

(1)その年の12月31日までに債務が成立していること。

(2)その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

(3)その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。

必要経費の注意事項

必要経費に算入する場合の注意事項については、次のとおりです。

(1)個人の業務においては、一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。

(例)交際費、接待費、地代、家賃、水道光熱費

この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

(2)必要経費になるものとならないものの例

 ①生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません。

  逆に、受取った人も所得としては考えません。

  これは、土地や家屋に限らずその他の資産を借りた場合も同様です。

  ただし、例えば子が生計を一にする父から業務のために借りた土地・建物に課される固定資産税等の費用は、子が営む業務の必要経費になります。

 ②生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金(青色事業専従者給与は除きます。)は必要経費になりません。

 (注)青色申告者でない人についての事業専従者控除の金額が、必要経費とみなされます。

 ③業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になります。

 (注)不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地等を取得するために要した負債の利子の額は、不動産所得の計算上必要経費になりますが、不動産所得の金額が損失(赤字)となった場合には、その負債の利子の額に相当する部分の損失の額は生じなかったものとみなされ、他の所得金額との損益通算はできません。

 ④業務用資産の取壊し、除却、滅失の損失および業務用資産の修繕に要した費用は、一定の場合を除き必要経費になります。

 ⑤事業税は全額必要経費になりますが、固定資産税は業務用の部分に限って必要経費になります。

 ⑥所得税や住民税は必要経費になりません。

 ⑦罰金、科料および過料などは必要経費になりません。

 ⑧公務員に対する賄賂などについては必要経費になりません。

必要経費の特例(1)家内労働者等の所得計算の特例

家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。

家内労働法に規定する家内労働者とは、通常、自宅を作業場として、メーカーや問屋などの委託者から、部品や原材料の提供を受けて、一人または同居の親族とともに、物品の製造や加工などを行い、その労働に対して工賃を受け取る人をいいます。

家内労働者等については、必要経費の額が55万円に満たない場合には、最高55万円(令和元年分以前は65万円)まで必要経費とすることができる特例があります。

必要経費の特例(2)事業に専ら従事する親族がある場合の必要経費の特例

事業主が生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給料などは、原則として必要経費に算入されません。

ただし、一定の要件に該当する場合には、それぞれ次のように取り扱われ、必要経費に算入することができます。

 ①青色申告者の場合

事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が、事業主の事業に従事することができると認められる期間の1/2を超える期間、その事業に専ら従事することにより、税務署長に提出された届出書に記載された範囲内の給与の支払を受けた場合には、事業主はその給与の額のうち労務の対価として適正な金額を事業所得の必要経費に算入することができます。

 ②白色申告者の場合

事業主と生計を一にする配偶者その他の親族が、事業主の事業にその年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事した場合には、事業主は、親族1人につき最高50万円(配偶者の場合には最高86万円)を必要経費とみなして、事業所得の計算をすることができます。

この記事を書いた人

mtbcpa

東京都文京区の税理士・公認会計士です。
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