課税仕入れの判断事例

課税仕入れに該当するのか否か、各種支出の内容に沿ってみていきます。

出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当

国内の出張または転勤のために、役員または使用人に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当については、支給した金額のうちその旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れになります。

ただし、海外への出張または転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。

また、事業者が使用人等に支給する通勤手当(通勤定期等の現物による支給を含む。)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れになります。

寄附金、交際費

寄附金の支出は、対価を得て行われる取引ではありませんので、課税仕入れとはなりません。

ただし、名目は寄附であっても、その寄附に対価性が認められる場合には課税仕入れとなります。

また、金銭による寄附は課税仕入れとなりませんが、物品を購入して寄附した場合には、その物品の購入代金は課税仕入れとなります。

交際費については、その支出がお中元やお歳暮のように得意先への贈答品としての物品の購入代金や、得意先の接待のための飲食代の支払である場合には、原則として課税仕入れとなります。

ただし、得意先へ商品券の交付をする場合や、祝金、餞別、弔慰金などを支出した場合には、課税仕入れとなりません。

なお、渡切交際費などで、その使途が明らかにされていない場合には、仕入税額控除の対象となりません。

会費、入会金

同業者団体や組合などに支払う会費や組合費などが課税仕入れになるかどうかは、その団体から受ける役務の提供などと支払う会費などとの間に明らかな対価関係があるかどうかによって判定します。

したがって、セミナーや講座などの会費は、講義や講演の役務の提供などの対価ですから課税仕入れとなり、仕入税額控除の対象になります。

対価性があるかどうかの判定が困難なものについては、その会費などを支払う事業者とその会費などを受ける同業者団体や組合などの双方が、その会費などを役務の提供や資産の譲渡等の対価に当たらないものとして継続して処理している場合はその処理が認められます。

なお、この場合には、同業者団体や組合などは、その旨をその構成員に通知するものとされています。

また、その団体の業務運営に必要な通常会費については、一般的には対価関係がありませんので、同業者団体や組合などは資産の譲渡等の対価に当たらないものとして取り扱って差し支えないこととされています。

この場合には、その構成員においてはその通常会費は課税仕入れとならず、仕入税額控除の対象になりません。

さらに、同業者団体や組合などに支払う入会金も、役務の提供などとの間に明らかな対価関係があるかどうかによって判定します。

したがって、ゴルフクラブ、宿泊施設、体育施設、遊戯施設その他のレジャー施設を利用するための会員となる入会金は、役務の提供などとの間に明らかな対価関係がありますから、課税仕入れになります。

なお、この場合の入会金は、脱退などに際し返還されないものに限られます。

従業員に対する食事の提供

事業者が福利厚生の一環として従業員に対して食事の提供を行う場合の消費税の取扱いは次のとおりです。

社員食堂において従業員に無償で食事を提供した場合には、対価の授受がありませんので、資産の譲渡等には該当しません。

したがって、消費税の課税関係は生じません。

社員食堂において従業員に有償で食事を提供した場合には、従業員から徴収する食事代金が課税資産の譲渡等の対価に該当しますので、消費税の課税の対象となります。

この場合、その食事代金が一般の市場価格に比べて安い価格であっても、従業員から徴収する食事代金が資産の譲渡等の対価となります。

なお、社員食堂を直営で行っている場合の維持費用、例えば原材料の購入代金や水道光熱費、また、業者に委託している場合の運営委託費は、課税仕入れとなります。

ただし、社員食堂を直営で行っている場合の従業員に支払う給与は、課税仕入れに該当しません。

外部の特定の食堂と契約し、従業員に対してその食堂で利用できる食券を無償で交付した場合には、従業員との間では対価の授受がないため、消費税の課税関係は生じません。

一方、この食券を無償ではなく有償で販売した場合には、従業員から徴収した食券の代金が資産の譲渡等の対価に該当しますので、消費税の課税の対象となります。

ただし、従業員から受け取った食券の代金を預り金として処理し、契約食堂に支払う代金の一部に充当している場合には、課税の対象とはなりません。

なお、事業者が契約食堂に従業員の食事代金の全部または一部を支払っているときは、その金額は課税仕入れに該当します。

ただし、従業員から徴収した代金を預り金として処理している場合には、事業者が実際に負担した部分の金額のみが課税仕入れの対象となります。

使用人の出向

出向とは、派遣される使用人等が出向元事業者と雇用関係を維持しながら、出向先事業者との間においても雇用関係に基づき勤務する形態をいいます。

事業者が事業として他の者から役務の提供を受けた場合は、課税仕入れに該当しますが、その役務の提供が雇用契約に基づくものであり、その支払った対価が給与所得となる場合には、課税仕入れには該当しません。

したがって、事業者が使用人を子会社や関連会社に出向させる場合、出向者に対する給与の負担方法には次のようなものがありますが、いずれの方法であっても、出向者に対して給与を支給したものとして取り扱います(給与負担金について課税関係は生じません。)。

(1) 出向元が給料の全額を支払い、その一部を出向先に請求する方法

(2) 出向先が給料の全額を支払い、その一部を出向元に請求する方法

(3) 出向元と出向先がそれぞれ給料の一部を支払う方法

人材派遣

人材派遣とは、通常、人材派遣契約に基づき人材派遣会社がその使用人を他の事業者に派遣するものをいい、出向の場合と異なり、派遣された使用人の雇用関係は人材派遣会社との間にしかありません。

したがって、人材派遣は人材派遣会社の派遣先事業者に対する役務の提供ということになるため、人材派遣会社が受け取る人材派遣の対価は課税売上げとなり、支払った事業者の方は課税仕入れとなります。

共同行事に係る負担金

同業者団体または企業グループなどが、構成員全体の宣伝、販売促進、会議などの共同行事を行うため、共同行事の主宰者が、その費用を賄うために構成員から負担金、賦課金等を集めることがあります。

一般的には、主宰者が構成員のために負担金等を受け取って宣伝、販売促進などを行うことになります。

したがって、その負担金等は役務の提供の対価として、消費税の課税の対象となります。

この場合には、各構成員は、負担した負担金等について仕入税額控除の対象とすることができます。

ただし、その共同行事のために要した費用の全額について、構成員ごとの負担割合があらかじめ定められている場合において、主宰者が収受した負担金等について役務提供の対価とせず、その負担割合に応じて各構成員がその共同行事を行ったものとして、当該負担金等について仮勘定として経理している場合には、その処理が認められます。

例えば、主宰者が負担金等の収受額を仮受金とし、広告料などの経費を仮受金から支出するなど、仮勘定として経理を行っている場合には、主宰者の課税売上げ、課税仕入れに該当しないものとする処理が認められます。

この場合、構成員は、負担金等により賄われた費用のうち広告料など課税仕入れ等に該当するものがあるときは、その負担割合に応じて仕入税額控除の対象とすることとなります。

なお、主宰者がその負担金等から生じた剰余金を取得する場合には、この仮勘定による処理は認められません。

この記事を書いた人

mtbcpa

東京都文京区の税理士・公認会計士です。
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