一般試験研究費の額に係る税額控除制度とは?

制度の概要

「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」は、各事業年度において、試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額に一定割合を乗じて計算した金額を、その事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。

(注) この制度は、「中小企業技術基盤強化税制」との重複適用は認められません。

適用対象法人

この制度の適用対象法人は、青色申告法人(人格のない社団等を含みます。)です。

適用対象事業年度

この制度の適用対象事業年度は、次に掲げる事業年度以外の事業年度です。

(1) 解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度

(2) 清算中の各事業年度

試験研究費の額

この制度の対象となる試験研究費の額とは、次の(1)及び(2)に掲げる金額の合計額(その金額に係る費用に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額となります。)をいいます。

(1) 次に掲げる費用の額(売上原価等の原価の額を除きます。)で各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるもの

イ 製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究(新たな知見を得るため又は利用可能な知見の新たな応用を考案するために行うものに限ります。)のために要する費用(研究開発費として損金経理をした金額のうち、下記(2)の固定資産又は繰延資産の償却費、除却による損失及び譲渡による損失の額を除きます。)で次に掲げるもの。
 (イ) その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限ります。)及び経費
 (ロ) 他の者に委託をして試験研究を行う法人(人格のない社団等を含みます。)のその試験研究のためにその委託を受けた者に対して支払う費用
 (ハ) 技術研究組合法第9条第1項の規定により賦課される費用

ロ 対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究(以下「新サービス研究」といいます。)として次に掲げるものの全てが行われる場合のその試験研究のために要する一定の費用(注)をいいます。
 (イ) 大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部、主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集
 (ロ) その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家(※)により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウェア(これに準ずるソフトウェアを含みます。)を用いて行われる分析
 (※) 情報解析専門家とは、情報の解析に必要な確率論及び統計学に関する知識並びに情報処理に関して必要な知識を有すると認められる者をいいます。
 (ハ) その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計
 (ニ) その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認

(注) 上記の「一定の費用」とは、次の費用をいいます。
 1 その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(情報解析専門家でその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限ります。)及び経費(外注費にあっては、これらの原材料費及び人件費に相当する部分並びにその試験研究を行うために要する経費に相当する部分(外注費に相当する部分を除きます。)に限ります。)
 2 他の者に委託をして試験研究を行うその法人のその試験研究のためにその委託を受けた者に対して支払う費用(1の原材料費、人件費及び経費に相当する部分に限ります。)

(2) 上記(1)イ又はロに掲げる費用の額で各事業年度において研究開発費として損金経理をした金額のうち、棚卸資産若しくは固定資産(事業の用に供する時において試験研究の用に供する固定資産を除きます。)の取得に要した金額とされるべき費用の額又は繰延資産(試験研究のために支出した費用に係る繰延資産を除きます。)となる費用の額

(注) 令和3年4月1日前に開始した事業年度については、上記(2)の額がこの制度の対象となる試験研究費の額に含まれず、新たな知見を得るため又は利用可能な知見の新たな応用を考案するために行う試験研究に該当しない試験研究のために要する費用の額がこの制度の対象となる試験研究費の額に含まれるなど、対象となる試験研究費の額が異なります。

税額控除限度額

(1) 令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度

イ 税額控除限度額

 税額控除限度額は、試験研究費の額に次の区分に応じそれぞれ次により計算した税額控除割合(小数点以下3位未満切捨て)を乗じて計算した金額となります。

 (イ) 試験研究費割合が10%以下の場合
  A 増減試験研究費割合が9.4%を超える場合(Cに掲げる場合を除きます。)
   税額控除割合(14%を上限)=10.145%+{(増減試験研究費割合-9.4%)×0.35}
  B 増減試験研究費割合が9.4%以下である場合(Cに掲げる場合を除きます。)
   税額控除割合(2%を下限)=10.145%-{(9.4%-増減試験研究費割合)×0.175}
  C 設立事業年度である場合又は比較試験研究費の額が0である場合
   税額控除割合=8.5%
 (ロ) 試験研究費割合が10%を超える場合
  税額控除割合(上限14%)=(上記(イ)A、B又はCの割合)+{(上記(イ)A、B又はCの割合)×控除割増率(※)}
  (※) 控除割増率(上限10%)=(試験研究費割合-10%)×0.5

ロ 税額控除上限額

 上記の税額控除限度額がその事業年度の調整前法人税額の25%に相当する金を超える場合には、その25%に相当する金額が税額控除の上限額となります。

 ただし、その事業年度が次に掲げる事業年度に該当する場合には、上記の25%に相当する金額にそれぞれ次の金額を加算した金額が、その事業年度の税額控除上限額となります。

 なお、下記の(イ)と(ロ)又は(ロ)と(ハ)は重複適用できますが、(イ)と(ハ)については重複適用することができません。
 (イ) 研究開発を行う一定のベンチャー企業に該当する事業年度
  上乗せ額=調整前法人税額×15%
 (ロ) 試験研究費割合が10%を超える事業年度
  上乗せ額=調整前法人税額×{(試験研究費割合-10%)×2}(※)
  (※) {(試験研究費割合-10%)×2}は10%を上限
 (ハ) 基準年度比売上金額減少割合が2%以上であり、かつ、試験研究費の額が基準年度試験研究費の額を超える事業年度
  上乗せ額=調整前法人税額×5%

(注1) 「増減試験研究費割合」とは、増減試験研究費の額(その適用を受ける事業年度の試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した金額)の比較試験研究費の額に対する割合をいいます。

(注2) 「比較試験研究費の額」とは、その適用を受ける事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の試験研究費の額の合計額をその各事業年度の数で除して計算した金額をいいます。

(注3) 「試験研究費割合」とは、その適用を受ける事業年度の試験研究費の額の平均売上金額に対する割合をいいます。

(注4) 「平均売上金額」とは、その適用を受ける事業年度及びその事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売上金額(一定のものに限ります。以下同じです。)の平均額をいいます。

(注5) 「調整前法人税額」とは、研究開発税制など一定の規定を適用しないで計算した場合の法人税の額をいいます。

(注6) 「基準年度比売上金額減少割合」とは、その適用を受ける事業年度の売上金額が令和2年2月1日前に最後に終了した事業年度の売上金額に満たない場合のその満たない部分の金額のその最後に終了した事業年度の売上金額に対する割合をいいます。

(注7) 「基準年度試験研究費の額」とは、令和2年2月1日前に最後に終了した事業年度の試験研究費の額をいいます。

(2) 平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に開始した事業年度

イ 税額控除限度額

 税額控除限度額は、試験研究費の額に次の区分に応じそれぞれ次により計算した税額控除割合(小数点以下3位未満切捨て)を乗じて計算した金額となります。

 (イ) 試験研究費割合が10%以下の場合
 A 増減試験研究費割合が8%を超える場合(Cに掲げる場合を除きます。)
  税額控除割合(14%を上限)=9.9%+{(増減試験研究費割合-8%)×0.3}
 B 増減試験研究費割合が8%以下である場合(Cに掲げる場合を除きます。)
  税額控除割合(6%を下限)=9.9%-{(8%-増減試験研究費割合)×0.175}
 C 設立事業年度である場合又は比較試験研究費の額が0である場合
  税額控除割合=8.5%
 (ロ) 試験研究費割合が10%を超える場合
  税額控除割合(上限14%)=(上記(イ)A、B又はCの割合)+{(上記(イ)A、B又はCの割合)×控除割増率(※)}
  (※) 控除割増率(上限10%)=(試験研究費割合-10%)×0.5

ロ 税額控除上限額

 上記の税額控除限度額がその事業年度の調整前法人税額の25%に相当する金を超える場合には、その25%に相当する金額が税額控除の上限額となります。

 ただし、その事業年度が、次に掲げる事業年度に該当する場合には、上記の25%に相当する金額にそれぞれ次の金額を加算した金額が、その事業年度の税額控除上限額となります。

 なお、下記の(イ)と(ロ)については重複適用できます。

 (イ) 研究開発を行う一定のベンチャー企業に該当する事業年度
  上乗せ額=調整前法人税額×15%
 (ロ) 試験研究費割合が10%を超える事業年度
  上乗せ額=調整前法人税額×{(試験研究費割合-10%)×2}(※)
  (※) {(試験研究費割合-10%)×2}は10%を上限

その他注意事項

 この制度の適用を受けるためには、控除の対象となる試験研究費の額及び控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。

 中小企業者又は農業協同組合等以外の法人が、平成30年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において次の要件のいずれにも該当しない場合(その事業年度の所得金額が前事業年度の所得金額以下である場合を除きます。)には、適用できません。

(1) 継続雇用者給与等支給額  > 継続雇用者比較給与等支給額

(2) 国内設備投資額 > 当期償却費総額 × 30%

この記事を書いた人

mtbcpa

東京都文京区の税理士・公認会計士です。
税理士顧問・記帳代行・確定申告・クラウド会計導入、お気軽にご相談ください。