地域未来投資促進税制とは、地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合に、特別償却又は税額控除が認められる制度です。
制度の概要
この制度は、青色申告書を提出する法人で承認地域経済牽引事業者であるものが、地域未来投資促進法の施行の日(平成29年7月31日)から令和5年3月31日までの期間(「指定期間」)内に、承認地域経済牽引事業に係る促進区域内において、承認地域経済牽引事業計画に従って特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をする場合において、特定地域経済牽引事業施設等を構成する新品の機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物(「特定事業用機械等」)を取得し、その事業の用に供した場合(貸付けの用に供した場合を除きます。)に、特別償却又は税額控除を認めるものです。
なお、中小企業者等以外の法人が平成30年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、下記その他の注意事項(1)の要件を満たさない場合には、この税額控除の適用が受けられません。
(注) 所有権移転外リース取引により取得した特定事業用機械等については、特別償却の規定は適用されませんが、税額控除の規定は適用されます。
適用対象法人
この制度の適用対象法人は、青色申告法人で、地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律に規定する承認地域経済牽引事業者です。
適用対象事業年度
この制度の適用対象事業年度は、指定期間内に特定事業用機械等を取得又は製作若しくは建設して承認地域経済牽引事業の用に供した場合におけるその承認地域経済牽引事業の用に供した日を含む事業年度です。
ただし、この事業年度であっても、解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度は除きます。
適用対象資産
この制度の対象となる資産は、新設若しくは増設に係る特定地域経済牽引事業施設等を構成する機械及び装置、器具及び備品、建物及びその附属設備並びに構築物でその製作若しくは建設の後事業の用に供されたことのないものとされています。
また、対象資産の取得価額の合計額のうち本制度の対象となる金額は80億円が限度とされています。なお、貸付けの用に供されるものは、対象となりません。
(注) 特定地域経済牽引事業施設等とは、承認地域経済牽引事業計画に定められた施設又は設備で一の承認地域経済牽引事業計画に定められた施設又は設備を構成する減価償却資産の取得価額の合計額が2,000万円以上のものをいいます。
特別償却限度額
特別償却限度額は、それぞれ次の算式により計算します。
(1) 特定事業用機械等の取得価額の合計額が80億円以下の場合
イ 機械及び装置並びに器具及び備品
(イ) 平成31年4月1日以後に地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認を受けた法人がその承認地域経済牽引事業(地域の成長発展の基盤強化に著しく資するものとしての基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものに限ります。)の用に供したもの
特別償却限度額 = 特定事業用機械等の取得価額 × 50%
(ロ) (イ)以外のもの
特別償却限度額 = 特定事業用機械等の取得価額 × 40%
ロ 建物及びその附属設備並びに構築物
特別償却限度額 = 特定事業用機械等の取得価額 × 20%
(2) 特定事業用機械等の取得価額の合計額が80億円を超える場合
イ 機械及び装置並びに器具及び備品
(イ) 平成31年4月1日以後に地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認を受けた法人がその承認地域経済牽引事業(地域の成長発展の基盤強化に著しく資するものとしての基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものに限ります。)の用に供したもの
特別償却限度額 = 80億円 × 特定事業用機械等の取得価額/特定事業用機械等の取得価額の合計額 × 50%
(ロ) (イ)以外のもの
特別償却限度額 = 80億円 × 特定事業用機械等の取得価額/特定事業用機械等の取得価額の合計額 × 40%
ロ 建物及びその附属設備並びに構築物
特別償却限度額 = 80億円 × 特定事業用機械等の取得価額/特定事業用機械等の取得価額の合計額 × 20%
税額控除限度額
税額控除限度額は、次の算式により計算します。
ただし、その税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合には、控除を受ける金額は、その20%相当額が限度となります。
(1) 特定事業用機械等の取得価額の合計額が80億円以下の場合
イ 機械及び装置並びに器具及び備品
(イ) 平成31年4月1日以後に地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認を受けた法人がその承認地域経済牽引事業(地域の成長発展の基盤強化に著しく資するものとしての基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものに限ります。)の用に供したもの
税額控除限度額 = 特定事業用機械等の取得価額 × 5%
(ロ) (イ)以外のもの
税額控除限度額 = 特定事業用機械等の取得価額 × 4%
ロ 建物及びその附属設備並びに構築物
税額控除限度額 = 特定事業用機械等の取得価額 × 2%
(2) 特定事業用機械等の取得価額の合計額が80億円を超える場合
イ 機械及び装置並びに器具及び備品
(イ) 平成31年4月1日以後に地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認を受けた法人がその承認地域経済牽引事業(地域の成長発展の基盤強化に著しく資するものとしての基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものに限ります。)の用に供したもの
税額控除限度額 = 80億円 × 特定事業用機械等の取得価額/特定事業用機械等の取得価額の合計額 × 5%
(ロ) (イ)以外のもの
税額控除限度額 = 80億円 × 特定事業用機械等の取得価額/特定事業用機械等の取得価額の合計額 × 4%
ロ 建物及びその附属設備並びに構築物
税額控除限度額 = 80億円 × 特定事業用機械等の取得価額/特定事業用機械等の取得価額の合計額 × 2%
その他注意事項
(1) 「税額控除限度額」の規定は、中小企業者(注1)又は農業協同組合等以外の法人が平成30年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において次の要件のいずれにも該当しない場合(その事業年度の所得金額が前事業年度の所得金額以下である場合を除きます。)には、適用できません。
イ 継続雇用者給与等支給額 (注2) > 継続雇用者比較給与等支給額 (注3)
ロ 国内設備投資額 (注4) > 当期償却費総額 (注5) × 30%
(注1) 中小企業者とは、次に掲げる法人をいいます。ただし、中小企業者のうち適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます。)に該当するものは除かれます。
(1) 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人
イ その発行済株式又は出資(自己の株式又は出資を除きます。以下同じです。)の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されている法人
ロ 上記イのほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人
(注) 大規模法人とは、次に掲げる法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。
(1) 資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
(2) 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
(3) 大法人(次に掲げる法人をいいます。以下同じです。)との間にその大法人による完全支配関係がある法人
イ 資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人
ロ 相互会社及び外国相互会社のうち、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
ハ 受託法人
(4) 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に保有されている法人((3)に掲げる法人を除きます。)
ハ 受託法人
(2) 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人(受託法人を除きます。)
(注2) 継続雇用者給与等支給額とは、法人の適用年度及び前事業年度の期間内の各月においてその法人の給与等の支給を受けた国内雇用者(雇用保険法の一般被保険者に限られ、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の継続雇用制度の対象者を除くこととされています。以下「継続雇用者」といいます。)に対する適用年度の給与等の支給額(その給与等に充てるために他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額を除きます。)がある場合には、その金額を控除した金額になります。以下同じです。)をいいます。
(※) 令和3年4月1日前に開始した事業年度については、上記の「給与等に充てるために他の者から支払を受ける金額」には雇用安定助成金額を含みます。
(注3) 継続雇用者比較給与等支給額とは、法人の継続雇用者に対する前事業年度の給与等の支給額をいいます。
(注4) 国内設備投資額とは、法人が適用年度において取得等をした国内にある法人の事業の用に供する法人税法施行令第13条各号に掲げる資産(時の経過によりその価値の減少しないものは除きます。)でその適用年度終了の日において有するものの取得価額の合計額をいいます。
(注5) 当期償却費総額とは、法人が有する減価償却資産につき適用年度においてその償却費として損金経理をした金額の合計額をいいます。
(2) 一の資産についてこの制度による特別償却と税額控除との重複適用は認められません。
(3) この制度による特別償却又は税額控除の適用を受ける資産は、租税特別措置法上の圧縮記帳、他の制度による特別償却又は他の税額控除の規定の重複適用は認められません。
(4) 特別償却の適用を受けるためには、確定申告書等に償却限度額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。
また、税額控除の適用を受けるためには、控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。
(5) 特別償却の適用を受けることに代えて、特別償却限度額以下の金額を損金経理により特別償却準備金として積み立てること又はその事業年度の決算確定日までに剰余金の処分により特別償却準備金として積み立てることにより、損金の額に算入することも認められます。
この適用を受けるには、確定申告書等に特別償却準備金として積み立てた金額の損金算入に関する申告の記載をし、その積み立てた金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。