中小企業経営強化税制とは?

中小企業経営強化税制は、中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合に特別償却又は税額控除が認められる制度です。

制度の概要

この制度は、青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者などが平成29年4月1日から令和5年3月31日までの期間(「指定期間」)内に、新品の特定経営力向上設備等を取得又は製作若しくは建設して、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却又は税額控除を認めるものです。

(注1)所有権移転外リース取引により取得した特定経営力向上設備等については、特別償却の規定は適用されませんが、税額控除の規定は適用されます。

適用対象法人

この制度の適用対象法人は、中小企業者(注1)又は農業協同組合等若しくは商店街振興組合で、青色申告書を提出するもののうち、中小企業等経営強化法に規定する経営力向上計画の認定を受けたものとされています。

 (注1)中小企業者とは、次に掲げる法人をいいます。ただし、中小企業者のうち適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます。)に該当するものは除かれます。

 (1) 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人

  イ その発行済株式又は出資(自己の株式又は出資を除きます。以下同じです。)の総数又は総額の2分の1以上を同  一の大規模法人に所有されている法人
  ロ 上記イのほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている法人
  (注1) 大規模法人とは、次に掲げる法人をいい中小企業投資育成株式会社を除きます。
   (1) 資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人
   (2) 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
   (3) 大法人(次に掲げる法人をいいます。以下同じです。)との間にその大法人による完全支配関係がある法人
    イ 資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人
    ロ 相互会社及び外国相互会社のうち、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
    ハ 受託法人

 (注2) 令和3年4月1日前に取得等をした対象資産についてこの制度の適用を受ける場合には、上記(注1)の大規模法人から独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小企業等経営強化法の認定を受けたいわゆる事業承継ファンドの出資に係る部分に限ります。)を除きます。
   (4) 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を直接又は間接に保有されている法人((3)に掲げる法人を除きます。)
    ハ 受託法人

 (2) 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人(受託法人を除きます。)

適用対象事業年度

この制度の適用対象事業年度は、指定期間内に適用対象資産を取得又は製作若しくは建設して指定事業の用に供した場合におけるその指定事業の用に供した日を含む事業年度です。

ただし、この事業年度であっても、解散(合併による解散を除きます。)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度は除きます。

適用対象資産

この制度の対象となる資産(「特定経営力向上設備等(注3)」)は、その製作の後事業の用に供されたことのない(つまり新品の)生産等設備(注1)を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアで、一定の規模以上のもの(注2)とされています。ただし、貸付けの用に供する資産は、特定経営力向上設備等には該当しません。

(注1)生産等設備とは、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を稼得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいい、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設のようなものは該当しません。

(注2)「一定の規模以上のもの」とは、それぞれ次のものをいいます。
 イ 機械及び装置 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
 ロ 工具、器具及び備品 1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの
 ハ 建物附属設備 一の取得価額が60万円以上のもの
 ニ ソフトウェア 一の取得価額が70万円以上のもの(複写して販売するための原本、開発研究用のもの又はサーバー用のオペレーティングシステムのうち一定のものなどは除きます。) 

(注3)特定経営力向上設備等とは、中小企業等経営強化法施行規則第16条第2項に規定する経営力向上に著しく資する設備等(生産性向上設備・収益力強化設備・デジタル化設備・経営資源集約化設備)(中小企業等経営強化法第17条第1項に規定する経営力向上計画に記載されたものに限ります。)をいいます。

指定事業

この制度の適用対象となる指定事業は次に掲げる事業です。

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限ります。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、情報通信業、損害保険代理業、不動産業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、映画業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)及びサービス業(他に分類されないもの)

(注)娯楽業(映画業を除きます。)は対象になりません。
 また、性風俗関連特殊営業に該当する事業も対象となりません。

特別償却限度額

特別償却限度額は、取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額とされ、普通償却限度額と併せその取得価額の全額を償却(即時償却)することができます。

税額控除限度額

税額控除限度額は、特定経営力向上設備等の取得価額の7%相当額(特定中小企業者等(注)においては10%)です。

(注) 「適用対象法人」の中小企業者のうち、資本金の額又は出資金の額が3,000万円を超える法人以外の法人又は農業協同組合等若しくは商店街振興組合をいいます。

なお、税額控除の控除上限は、この制度における税額控除、中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措法42の6)における税額控除及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度(旧措法42の12の3)における税額控除の合計でその事業年度の調整前法人税額の20%相当額を上限とされています。

税額控除限度超過額の繰越し

税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超えるために、その事業年度において税額控除限度額の全部を控除しきれなかった場合には、その控除しきれなかった金額(以下「繰越税額控除限度超過額」といいます。)について1年間の繰越しが認められます。

その他注意事項

(1) 一の資産についてこの制度による特別償却と税額控除との重複適用は認められません。

(2) この制度による特別償却又は税額控除の適用を受ける資産は、租税特別措置法上の圧縮記帳、他の制度による特別償却又は他の税額控除の規定の重複適用は認められません。

(3) 特別償却の適用を受けるためには、確定申告書等に償却限度額の計算に関する明細書及び経営力向上計画の写しと経営力向上計画に係る認定書の写しを添付して申告する必要があります。
 また、税額控除の適用を受けるためには、控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する明細書及び経営力向上計画の写しと経営力向上計画に係る認定書の写しを添付して申告する必要があります。
 なお、繰越税額控除限度超過額の繰越控除を受けるためには、繰越税額控除限度超過額が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付し、かつ、繰越税額控除限度超過額の繰越控除を受けようとする事業年度の確定申告書等に繰越控除を受ける金額を記載するとともに、その金額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。

(4) 特別償却の適用を受けることに代えて、特別償却限度額以下の金額を損金経理により特別償却準備金として積み立てること又はその事業年度の決算確定日までに剰余金の処分により特別償却準備金として積み立てることにより、損金の額に算入することも認められます。
 この適用を受けるには、確定申告書等に特別償却準備金として積み立てた金額の損金算入に関する申告の記載をし、その積み立てた金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

(※) 中小企業庁ホームページ(http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/index.html)において、中小企業等経営強化法による経営力向上計画に係る手続き(経営力向上計画策定の手引き、認定事例集、経営力向上計画の申請様式類等)、経営力向上設備等に係る生産性向上要件証明書(工業会等による証明書について)及び税制等のパンフレット(税制措置・金融支援活用の手引き)が掲載されています。

この記事を書いた人

mtbcpa

東京都文京区の税理士・公認会計士です。
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