制度の概要
青色申告書を提出する法人が、平成30年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内新規雇用者に対して給与等を支給する場合において、その事業年度において「適用要件」を満たすときは、その事業年度の控除対象新規雇用者給与等支給額の15%(「適用要件」の《上乗せ要件》を満たす場合には、20%)相当額(「税額控除限度額」)の法人税額の特別控除ができることとされています。
適用対象法人
適用対象法人は、青色申告書を提出する法人です。
適用対象年度
平成30年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用できます。
ただし、設立事業年度(法人の設立の日を含む事業年度)、合併以外の事由による解散の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度においては、適用できません。
適用要件
(令和3年4月1日以後に開始した事業年度)
《適用要件》
次の(1)及び(2)の要件を満たす必要があります。
(1) 国内新規雇用者(注1)に対して給与等を支給すること。
(2) (新規雇用者給与等支給額(注2)-新規雇用者比較給与等支給額(注2))/新規雇用者比較給与等支給額≧2%
《上乗せ要件》
(教育訓練費の額(注3)-比較教育訓練費の額(注4))/比較教育訓練費の額≧20%
(注1)国内新規雇用者とは、法人の国内雇用者(法人の使用人(その法人の役員と特殊の関係のある者等の一定の者を除きます。)のうち国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者をいいます。)のうち国内に所在する事業所につき作成された労働者名簿にその国内雇用者の氏名が記載された日から1年を経過していないもの(その法人の国内雇用者となる直前にその法人又はその法人との間に支配関係がある法人の役員又は使用人であった一定の者等を除きます。)をいいます。
(注2)新規雇用者給与等支給額とは、法人の適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内新規雇用者のうち一般被保険者(雇用保険法60の21一)に該当するものに対する給与等の支給額をいいます。
新規雇用者比較給与等支給額とは、法人の適用事業年度の前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内新規雇用者のうち一般被保険者に該当するものに対する給与等の支給額をいいます。
新規雇用者給与等支給額及び新規雇用者比較給与等支給額を計算する場合には、その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額から、雇用安定助成金額を除くこととされています(雇用安定助成金額を控除しないで計算します)。
(注3)教育訓練費とは、法人がその国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で以下のものをいいます。
イ 法人がその国内雇用者に対して教育、訓練、研修、講習その他これらに類するもの(以下「教育訓練等」といいます。)を自ら行う場合の次の費用
1 教育訓練等のために講師又は指導者(その法人の役員又は使用人である者を除きます。以下「講師等」といいます。)に対して支払う報酬、料金、謝金その他これらに類するもの及び教育訓練等を行うために要する講師等の旅費のうちその法人が負担するもの並びに教育訓練等に関する計画又は内容の作成についてその教育訓練等に関する専門的知識を有する者(その法人の役員又は使用人である者を除きます。)に委託している場合のその専門的知識を有する者に対して支払う委託費その他これに類するもの
2 その教育訓練等のために施設、設備その他の資産を賃借する場合におけるその賃借に要する費用及びコンテンツ(文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像又はこれらを組み合わせたものをいいます。)の使用料(コンテンツの取得に要する費用に該当するものを除きます。)
ロ 法人から委託を受けた他の者(その法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含みます。)が教育訓練等を行う場合の、その教育訓練等のために当該他の者に対して支払う費用
ハ 法人がその国内雇用者を他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の、その他の者に対して支払う授業料、受講料、受験手数料その他の当該他の者が行う教育訓練等に対する対価として支払うもの
(注4)比較教育訓練費の額とは、法人の各事業年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額をいいます。
(平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間に開始した事業年度)
《適用要件》
次の(1)から(3)までの要件を満たす必要があります。
(1) 雇用者給与等支給額(注5)が比較雇用者給与等支給額(注6)を上回ること。
(2) (継続雇用者給与等支給額(注7)-継続雇用者比較給与等支給額(注8))/継続雇用比較給与等支給額≧3%
※ 継続雇用者比較給与等支給額が0である場合には、要件を満たさないものとされます。
(3) 国内設備投資額(注9)≧当期償却費総額(注10)×95%(注11)
《上乗せ要件》
(教育訓練費の額-比較教育訓練費の額(注12))/比較教育訓練費の額≧20%
※ 比較教育訓練費の額が0である場合には要件を満たすものとされます。ただし、教育訓練費の額も0である場合には、要件を満たさないものとされます。
(注5)雇用者給与等支給額とは、適用事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額(その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額となります。)をいいます。
(注6)比較雇用者給与等支給額とは、適用事業年度の前事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
なお、本制度の適用を受けようとする法人が合併法人等である場合など一定の場合における比較雇用者給与等支給額の計算方法等については、別途、調整規定が置かれています。
(注7)継続雇用者給与等支給額とは、継続雇用者(法人の適用事業年度及び前事業年度等の期間内の各月においてその法人の給与等の支給を受けた国内雇用者(*)として一定のものをいいます。)に対する適用事業年度の給与等の支給額をいいます。
(*)この国内雇用者は、一般被保険者に該当する者に限られ、その法人の就業規則において高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に規定する継続雇用制度を導入している旨の記載があり、かつ、1雇用契約書その他これに類する雇用関係を証する書類又は2賃金台帳のいずれかにその継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載がある場合のその者を除きます。
(注8)継続雇用者比較給与等支給額とは、法人の継続雇用者に対する前事業年度等の給与等の支給額をいいます。
(注9)国内設備投資額とは、法人が適用事業年度において取得等(*1)をした国内資産(*2)でその適用事業年度終了の日において有するものの取得価額の合計額をいいます。
(*1)取得又は製作若しくは建設をいい、合併、分割、贈与、交換、現物出資、現物分配による取得又は代物弁済としての取得を除きます。
(*2)国内にある法人の事業の用に供する資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、無形固定資産並びに生物をいいます。ただし、時の経過によりその価値の減少しないもの並びに棚卸資産、有価証券及び繰延資産に該当するものを除きます。
(注10)当期償却費総額とは、法人が有する減価償却資産につき適用事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(損金経理の方法又は適用事業年度の決算確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てた金額を含み、過年度分の減価償却超過額の当期認容額を除きます。)の合計額をいいます。
(注11)令和2年4月1日前に開始した各事業年度については90%になります。
(注12)比較教育訓練費の額とは、法人の適用事業年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される教育訓練費の額の年平均額をいいます。
なお、適用対象法人が合併法人等である場合など一定の場合における比較教育訓練費の額の計算方法等についても、比較雇用者給与等支給額の計算方法等と同様に、別途、調整規定が置かれています。
税額控除限度額
(令和3年4月1日以後に開始した事業年度)
税額控除限度額=控除対象新規雇用者給与等支給額(注13)×15%(注14)
(注13)控除対象新規雇用者給与等支給額とは、国内新規雇用者に対する給与等の支給額のうち適用対象法人の適用事業年度の調整雇用者給与等支給増加額(*1)に達するまでの金額をいいます。
(*1)調整雇用者給与等支給増加額=雇用者給与等支給額(*2)-比較雇用者給与等支給額(*2)
(*2)雇用安定助成金額がある場合には、雇用安定助成金額を控除して計算します。
(注14)「適用要件」の《上乗せ要件》を満たす場合には、20%とされます。
なお、この税額控除限度額が適用事業年度の調整前法人税額の20%相当額を超える場合には、控除を受ける金額は、その調整前法人税額の20%相当額が上限となります。
(注15)その事業年度において「地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」(措法42の12)の規定の適用を受ける場合には、所定の方法により計算したその控除を受ける金額の計算の基礎となった者に対する給与等の支給額を控除した残額とされています。
(平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間に開始した事業年度)
税額控除限度額=(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15%(注16)
(注16)「適用要件」の《上乗せ要件》を満たす場合には、20%とされます。
なお、この税額控除限度額が適用事業年度の調整前法人税額の20%相当額を超える場合には、控除を受ける金額は、その調整前法人税額の20%相当額が上限となります。
(注17)その事業年度において「地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除」(措法42の12)の規定の適用を受ける場合には、所定の方法により計算したその控除を受ける金額の計算の基礎となった者に対する給与等の支給額を控除した残額とされています。
申告に当たっての注意点
(1) 対象となる期間内に新たに設立された法人の設立の日を含む事業年度については、この制度の適用を受けることができません
(2) 確定申告書等(控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、その修正申告書又は更正請求書を含みます。)に控除の対象となる控除対象新規雇用者給与等支給額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用されます。
この場合において、控除される金額の計算の基礎となる控除対象新規雇用者給与等支給額は、確定申告書等に添付された書類に記載された控除対象新規雇用者給与等支給額が限度となります。
(3) 「適用要件」の《上乗せ要件》を満たすものとしてこの制度の適用を受けようとする場合には、教育訓練費の額及び比較教育訓練費の額に関する次の事項を記載した書類を、その適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に添付する必要があります。
イ 教育訓練等の実施時期、内容、対象となる国内雇用者の氏名
ロ 教育訓練等の費用を支出した年月日、内容及び金額並びに相手先の氏名又は名称
《連結納税制度》
連結納税制度においても、上記と同様の措置が講じられています。