介護施設サービスの対価は、医療費控除の対象となるか?

介護保険制度下での施設サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについては、次のとおりです。

概要

介護保険制度においては、介護保険サービスは医療との連携に十分配慮して行わなければならない(介護保険法2②)こととされており、このサービスには日常生活上の世話のほかに看護、医学的管理の下における療養上の世話等も含まれています。

要介護者が入所して介護保険サービスを受けられる施設には、(1)指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、指定地域密着型介護老人福祉施設、(2)介護老人保健施設、(3)指定介護療養型医療施設(療養型病床群等)および(4)介護医療院があります。

これらの施設から提供を受ける施設サービスの対価のうち、看護、医学的管理の下における療養上の世話等に相当する部分の対価として入所者が負担する金額については、医療費控除の対象となります。

なお、これらの施設が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されることとなっています。

参考

介護保険制度の下における施設サービスの対価で、医療費控除の対象となるものの概要は、次の表のとおりです。

施設名医療費控除の対象医療費控除の対象外
指定介護老人福祉施設
【特別養護老人ホーム】
指定地域密着型介護老人福祉施設
施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額1日常生活費
2特別なサービス費用
介護老人保健施設施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額1日常生活費
2特別なサービス費用
指定介護療養型医療施設
【療養型病床群等】
施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額1日常生活費
2特別なサービス費用
介護医療院施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額1日常生活費
2特別なサービス費用

(注1)日常生活費とは、理美容代やその他施設サービス等において提供される便宜のうち、日常生活においても通常必要となるものの費用で、その入所者に負担させることが適当と認められるものです。

(注2)介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設および介護医療院の個室等の特別室の使用料(診療または治療を受けるためにやむを得ず支払うものに限ります。)は、医療費控除の対象となります。

(注3)高額介護サービス費として払戻しを受けた場合は、その高額介護サービス費を医療費の金額から差し引いて医療費控除の金額の計算をすることとなります。

なお、指定介護老人福祉施設および指定地域密着型介護老人福祉施設の施設サービス費に係る自己負担額のみに対する高額介護サービス費については、その2分の1に相当する金額を医療費の金額から差し引いて医療費控除の金額の計算をすることとなります。

指定介護老人福祉施設または指定地域密着型介護老人福祉施設から受ける施設サービスの対価

指定介護老人福祉施設または指定地域密着型介護老人福祉施設から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象となります。

なお、指定介護老人福祉施設または指定密着型介護老人福祉施設が発行する領収証には、医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。

指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)または指定地域密着型介護老人福祉施設は、要介護者に対し、施設サービス計画に基づき、(1)入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、(2)機能訓練、(3)健康管理および(4)療養上の世話を行うことを目的とする施設であって、都道府県知事が指定したものをいいます。

また、指定介護老人福祉施設または指定地域密着型介護老人福祉施設は、介護保険制度の導入に伴い、所得税法上、「病院」または「診療所」に準ずる施設として位置付けられた上で、厚生労働省の通知等において、これらの施設から提供を受ける施設サービスの対価のうち、療養上の世話等に相当する部分の金額は、介護費、食費および居住費に係る自己負担額として支払った金額の2分の1に相当する金額とされています。

したがって、指定介護老人福祉施設または指定地域密着型介護老人福祉施設から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象となります。

介護老人保健施設から受ける施設サービスの対価

介護老人保健施設から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となります。

なお、介護老人保健施設が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。

(注)平成30年9月28日付厚生労働省通知(老老発0928第3号・老振発0928第2号)では、領収証の記載について、医療費控除対象額が明らかになるようにするため、介護費、食費および居住費に係る自己負担額を区分ごとにその金額を記載すること、可能な限り利用者の利便に資するよう、医療費控除の合計対象額を記載するよう努めることが記載されています。

介護老人保健施設は、要介護者に対し、施設サービス計画に基づき、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他の日常生活上の世話を行うことを目的とする施設をいいます。

また、介護老人保健施設は、医療法に定める「病院」または「診療所」ではないものの、医療法以外の規定(健康保険法や国民健康保険法等を除きます。)では、原則として「病院」または「診療所」に含まれることとされています。

したがって、介護老人保健施設から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となります。

指定介護療養型医療施設から受ける施設サービスの対価

指定介護療養型医療施設から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となります。

なお、指定介護療養型医療施設が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。

指定介護療養型医療施設(療養型病床群等)は、療養病床等を要する病院または診療所であって、その療養病床群に入院する要介護者に対し、施設サービス計画に基づき、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話および機能訓練その他必要な医療を行うことを目的とする施設であって、都道府県知事が指定したものをいいます。

また、指定介護療養型医療施設は、医療法に定める「病院」または「診療所」ではないものの、医療法以外の規定(健康保険法や国民健康保険法等を除きます。)では、原則として「病院」または「診療所」に含まれることとされています。

したがって、指定介護療養型医療施設から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となります。

(注)指定介護療養型医療施設は、平成18年の介護保険法の改正により、平成24年3月31日をもって廃止されることとなっていましたが、経過措置により令和6年3月31日まで廃止期限が延長されています。

介護医療院から受ける施設サービスの対価

介護医療院から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となります。

なお、介護医療院が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。

介護医療院は、要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づき、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、都道府県知事の許可を受けたものをいいます。

また、介護医療院は、医療法に定める「病院」または「診療所」ではないものの、医療法以外の規定(健康保険法や国民健康保険法等を除きます。)では、原則として「病院」または「診療所」に含まれることとされています。

したがって、介護医療院から提供を受ける施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額が医療費控除の対象となります。

(注)介護医療院は、平成29年の介護保険法の改正により、平成30年4月1日に創設されました。

この記事を書いた人

mtbcpa

東京都文京区の税理士・公認会計士です。
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